面接交渉権
面接交渉権とは、離婚後に監護者ではない(子供を引き取らなかった)親が、子供と面会したり、一時的に過ごしたりする権利のことをいいます。
民法など法律の条文に定められた権利ではありませんが、親としては当然に有する権利とされており、また、子供が別れた親に会うことができる権利でもありますので、監護者が一方的に拒否することはできません。
正当な理由無く面接を拒否した場合には親権者・監護者の変更の原因になる事もあります。離婚後に必ずといっていいほど問題になりますので、離婚条件として具体的な内容まで、十分な話し合いをすることが必要でしょう。
もし、話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に面接交渉権の調停を申し立て、家事調停委員などを交えて面接回数、面接方法などを取り決めることになります。
調停で協議が調わない場合は自動的に審判手続きが開始され、裁判官が審判を下します。また、法律上の離婚には至らないものの、話し合いがこじれたまま、一方の親が別居し、他方の親と子供を会わせないようにしている場合にも、家庭裁判所に面接交渉権の調停・審判を申し立てることができます。
面接交渉権については、離婚後にトラブルになる場合が多いので、なるべく離婚前に子供との面接の日時、場所、方法など具体的に協議をしましょう。面接交渉権は、親同士の問題だけではなく、子供にとっても重要な問題となります。協議をする際は、お子様の意思・利益を最大限尊重して下さい。
面接交渉権を協議する際に取り決めておいた方が良い事項は以下のようなものがあります。
①面接の頻度(月に○回、又は年に○回)
②回の面接時間
③面接時の連絡について
④面接の場所
⑤宿泊の可否
⑥電話や手紙のやりとりを認めるか
⑦学校行事へ参加できるか
⑧誕生日のプレゼント
また、取り決めた事項は後のトラブルを防止するためにも、必ず離婚協議書という形で作成することが必要です。
面接交渉権はあくまでも子供の福祉や利益を最優先に考え、親のエゴによる権利の濫用は許されません。現在の親権者、監護権者の教育、監護教育にとって好ましくない行為をした場合や、面接交渉の結果、かえって子の精神面における健全な成長を阻害する危険が認められるような場合などは、面接交渉権の制限を家庭裁判所に申し立てることができます。
面接交渉権の制限は程度によって判断されますが、子供がある年齢になるまで面接を禁止したり、面会時には監護者同伴という制限が付くこともあります。
繰り返しになりますが、面接交渉権は親だけの権利ではなく、子供の福祉、利益でもあります。子供の意向や利益を最大限に尊重してあげてください。
面接交渉権関連で実際にあった例
「事案の概要」
夫が別居中の妻との間の子を監護養育していたところ、家庭裁判所における調停手続き中に、妻と子の面接交渉を認める合意が成立し、その合意に基づいて子と面接交渉した妻が、そのまま子を連れ帰り監護養育を続けているため、夫が妻に対し人身保護法に基づき子の引渡しを求めた。
「結論」(平成13年12月20日 札幌地方裁判所判決参照)
子と面接交渉をしてそのまま連れ帰った妻の行為は、信義に反して違法であるが、その一事をもって直ちにそれが人身保護規則4条に定める「拘束がその権限なしにされていることが顕著である場合」には該当しない。
拘束が、現在の状態において「拘束が権限なしにされていることが顕著である場合」というためには、本件拘束を開始した経緯に違法行為があるということのほか、その違法性の程度や、その他現在の拘束状態の違法性を基礎づける具体的な諸事情を総合的に考慮して判断する必要がある。さらに、拘束者が子を監護することが、監護者の監護に比して子の幸福に反するかどうかという事情も勘案して判断する。
本件では、具体的な諸事情を総合的に判断した結果、人身保護規則4条に定める要件には該当しないので、夫の請求は棄却する。
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