不倫による慰謝料請求は公正証書を作成しましょう
夫(または妻)が不倫をした!慰謝料を請求する!
お気持ちは非常によく分かりますが、確実に慰謝料を請求して相手に支払わせたいのであれば、一度冷静になってみましょう。
問題となっている行為が「不倫」であり、あなたに慰謝料請求権が発生するためにはいくつかの要件をクリアしなければなりません。
不倫の慰謝料が認められるための要件は、次の4つです。
- 不貞行為があること
- 不倫相手が、既婚者と知っていたこと又は既婚者であると知り得る状況であったこと
- 不貞行為当時、婚姻関係(夫婦関係)が破綻していないこと
- 消滅時効にかかっていないこと
◎「不貞行為があること」とは
不貞行為とは、不倫を法的な表現に直したものとお考えください。不貞行為とは、配偶者のある人が、自らの自由な意思で、配偶者以外の異性と肉体関係をもつことをいいます。
ここで重要なことは、あくまでも「自由意思で肉体関係をもつ」ということです。ですので、たとえあなたが不倫だと考えていたとしても、デートしているだけ・メールしているだけという関係だけでは、不貞行為には当たらず、慰謝料を請求することは極めて難しいと思われます。
また、夫の風俗通いで婚姻関係が破綻した場合における風俗嬢に対する慰謝料請求も非常に困難であると思われます。
風俗嬢は、客の要望で商売として性行為をしているのであって、完全な自由意思で性的関係を結んでいるわけではありません。ですので、夫が特定の風俗嬢に入れ込んで家庭を壊したとしても、風俗嬢が積極的に家庭を壊すために夫を勧誘したわけでなければ、慰謝料請求は無理とお考えください。
不貞行為には当たらないが、相手との交際を止めさせたいとお考えであれば、内容証明で、相手に警告をする方法をとることもできます。もっとも、この方法をとる場合は、入念に文面を考えて書く必要があります。許せないという気持ちをそのまま文面にしてしまいますと、場合によっては名誉毀損や恐喝、脅迫罪に該当し、また、逆に相手側から損害賠償を請求される恐れもありますのでご注意ください。
◎「不倫相手が、既婚者と知っていたこと又は既婚者であると知り得る状況であったこと」とは
不倫の慰謝料請求の法的根拠は、民法の「不法行為に基づく損害賠償請求権」です。不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するためには、故意または過失が必要ですので、相手が既婚者と知っている場合や、既婚者と認識できる状況であったということが必要です。
◎「不貞行為当時、婚姻関係(夫婦関係)が破綻していないこと」とは
この点について、最高裁判所の判例は、「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。」として、不倫による慰謝料請求を認めていません。
不倫(肉体関係を持つこと)があなたに対する不法行為となるのは、それがあなたの婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、あなたと配偶者との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、あなたにこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないと評価されてしまうのです。
ですので、慰謝料を請求する場合は、相手方が「不倫当時は既に夫婦関係が破綻していた」と反論することを想定した動きをすることが重要です。
◎「消滅時効にかかっていないこと」とは
不倫による慰謝料請求権は、不倫の事実および不倫相手(加害者)を知った時から3年間行使しなかった場合は、時効によって権利が消滅します(民法724条)。不倫のときから20年を経過したときも同様です。
時効の起算日は「不倫の事実および不倫相手(加害者)を知った時」ですので、不倫をした事実は分かったが、不倫相手が誰だか分からない場合は、その不倫相手に対する慰謝料請求権は3年の消滅時効にかかりません。
ですが、不倫の事実および不倫相手(加害者)を知らなくても、不倫の時から20年経過すると、消滅時効にかかりますので注意が必要です。
(※もっとも、消滅時効が完成したからといって、そのまま当然に慰謝料請求権が消滅するわけではなく、不倫相手が裁判で「その慰謝料請求権は時効によって消滅した」と主張しなければ消滅しません。)
上記の要件をクリアして、相手に慰謝料を請求できる場合は、まず、内容証明郵便で相手に請求する方法が一般的ではあります。事前にしっかりと不倫の証拠固めを行ってから請求すれば、慰謝料の金額が法外なものでない限り、不倫相手は請求に応じやすくなるでしょう。
不倫相手と示談して慰謝料の金額等を決めた場合は、示談書を作成することになりますが、この示談書は必ず公正証書にすることを強くお勧めします。
その理由は、強制執行が可能ということにあります。
普通に示談書を作成しただけの場合、相手が払わなくなった慰謝料を強制的に回収するためには、まず裁判に勝つ必要があります。一般的に示談書には法的な強制力はないからです。ですが、裁判は費用も時間もかかるものですので、無事に慰謝料を回収できたときにはあなたも不倫相手も、心身ともに疲れきってしまったということになりかねません。
他方、公正証書の場合は、裁判をしなくても強制執行の手続きをすれば、慰謝料を強制的に回収することができます。それは、公正証書が法律の専門家である公証人によって作成された公文書であり、その公正証書の内容に「慰謝料の支払いがない場合は、強制執行を受けることに異存はありません」と入れることが出来るからです(強制執行認諾文言)。また、不倫相手からしても、慰謝料を支払わなければ強制執行されるという意識を持ちますので、より熱心に支払をしようとします。
後に紛争となって、それが泥沼化することによるお互いの負担を少なくするという意味でも、慰謝料の示談書は公正証書にしたほうがメリットが大きいと言えるでしょう。
▼まずは、こちらからお問い合わせください。